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歓人セレモニー 代表 大西敬行さん no.225

今月の人
ご家族で落ち着いて送り出せる自宅葬。お花や音楽、宗教者。希望に応じた儀式を提案
歓人セレモニー 代表
大西敬行さん
1974年、富田林生まれ。趣味は人間観察、お笑い鑑賞(なかやまきんに君が好き)、映画鑑賞。
大西敬行さん

「家に連れて帰ってあげられた」
自宅葬は遺族の心も癒やせる

 

 家族あるいは自分の最期の旅立ちを、どのようなかたちで行いたいか—。葬儀は人生の重大な儀式の一つでありながら、なかなか具体的なかたちをイメージをするのは難しい。そんな中、南河内初の家族葬専門の葬儀社が誕生した。「今、自宅葬にしてよかったというお声は多いんですよ。ご家族や近しい方、だいたい7人ぐらいまででしたら、それほど大変ではありませんのでご提案しています。会館と自宅を往復する必要もなく落ち着いてお送りすることができますし、費用面でも会館使用料やご遺体安置量が不要となります」

 

 そう話すのは「歓人セレモニー」を2019年に立ち上げた大西敬行さん。葬儀に携わって20年以上のキャリアを持ち、自宅や公民館、会館などを会場に、家族から丁寧に聞き取りをしたうえで、希望を反映させた葬儀のかたちを提案している。

 

「自宅葬をご提案する理由は他にもあります。入院中に『家に帰りたい』と希望されるも叶わずにお亡くなりになる方は少なくなく、自宅葬を行い、最期にご自宅にお帰りいただくことで、『家に連れて帰ってあげられた』と心のつかえが取れたご遺族さまを多く見てきました」

 

 設備が整っているホールと異なり、自宅葬では準備に手間暇がかかるのは事実だ。だが、それはあくまで葬祭業者側のことだという。「ですので、大手業者はあまり自宅葬を勧めないのですが、私は個人経営なので手間暇や収益はそっちのけ。この故人さまにふさわしいと思えるプランをご提案することが、私にとっても遣り甲斐なんですよ」

 

 今でこそ落ち着いた紳士風の大西さんだが、25歳までは定職に就かず「ニートでした」と笑う。「派遣で働いたり、プロボウラー目指して年間100万円をボウリングに費やしたりしていました」。そろそろ就職をしなくては……と考えていたある日、手にした求人誌に葬儀社の求人が出ていた。葬祭業に特に興味があった訳ではないが、「どんな仕事か興味が湧いたし、私が葬祭業に就いたら友達も驚くかなと思って(笑)」と軽い気持ちで応募。結果的に、そこで20年間勤め上げることとなる。

 

 最初の5年ほどは祭壇の設営やお花の準備などがメインの仕事だった。「裏方の仕事ばかりだったのですが、機会を見つけてはご遺族の方のお話をお聞きしたりしていました。でも徐々に、お花の演出などを提案するようにしてみたんです。故人さまのお部屋に通していただいた時に、クローゼットや本棚などを拝見するとその方の趣味や考え方に触れられる。お庭を見て、手入れをまめにされていらっしゃったらお花や緑がお好きだったのかな、とか。そうしてお一人おひとりに合う演出を提案することで、私はこの仕事の中に自分の役割を見つけようと思ったんです」

 

富田林に家族葬専門会館を建設中
葬儀は遺族が生き方を考える機会にも

 

 葬祭業に就いて7年目のある夕刻、大西さんは転換点となるお客さんに出会う。ホールの終業は18時。閉館準備をしていると、玄関先に中年の夫婦が立っていた。「どうしたんですか?とお声がけすると、不安そうなお顔で『息子はずっと行方不明だったのですが、その息子が自殺したと警察から電話があったんです。どうしたらいいですか』と。これは放っておけない。私がお手伝いしなければ、と思わずにはいられませんでした」。そして、その夫婦とともに警察署に息子さんを迎えに行った。「警察で安置されている場合は、解剖が行われた後なのでご遺体は裸なんです。故人さまのお姉さんは『弟にスーツを着せてあげたい』と、スーツをもって警察署に来られました。故人さまは病気がちではあったものの頑張って生きてきたこと、出会った医師に助けられたことも多く、それでお姉さんは看護師を目指したこと……。ご家族のお話をお聞きしながら、いろいろな思いがこみ上げました」

 

 私に何ができるのだろうか—。そう考えずにはいられなかったという大西さん。「紫色とお酒がお好きだったとのことで、それをイメージした祭壇をご用意しました。また、私には師匠といえるお坊さんがいるのですが、その方に通夜の前の日に頼んでお経をあげていただきました。すると、そのお経を聞いてご遺族は少し安堵されたご様子で……。儀式には人を癒やす力があるということを改めて感じました」

 

 その後、そのご親族から「友人の寿退社のお祝い花を届けてほしい」という依頼を受けた。「その送り先がなんと幼馴染の奥さんだったんです。それ以来、縁というものをさらに強く意識するようになりましたね」

 

 これまで、葬儀を通してさまざまなご家族の思いに触れてきた。そして、ご遺体のお迎えから儀式の完結まで、そのすべてにもっとアイデアを出しながらかかわりたいと、独立を決めた。「場所、お花、音楽、そして僧侶などの宗教者。このご家族さまにはこういうお式の流れがいいのでは、あの僧侶のお話がふさわしいのでは……と、葬儀のプロだからこそご相談に乗れることがある。ご事情も思いも十人十色です。電話で依頼を受けたのち、直接会ってお話をお聞きして、それからご提案をさせていただくのですが、自分の考えを押し付けるのは違うと考えています。あくまでご家族の思いが大前提。あやふやなところがあればそれを明確にし、『それならこういうかたちで送り出してあげられますよ』とお話をさせていただいています。また、たとえばきれい好きで整理整頓好きだった奥さまが亡くなられた際、旦那さまの性格が真逆の場合は、奥さまのこだわりに気づきにくいこともあります。そういう時は丁寧に聞き取りをすることで、奥さまのお人柄が表れるような演出を提案してみるんです」

 

 入院生活時に大事にしていたぬいぐるみなどを祭壇に添えたり、お孫さんが思い出の品や似顔絵などを飾れるスペースを設けたり、好きだった季節の花を盛り込んだり。遺族にとっては急な準備となり、思い至らないこともある。「それを想像してご提案することも私の仕事なんです」と大西さんは言う。

 

 また、普段は集まりにくい親族が一堂に会する機会でもある。第三者だからこそ、「奥さま(故人様)とはどんな出会いだったんですか?」など気軽に話題を振ることができ、それによって親族の会話が盛り上がることもあるという。「その会話でお孫さんたちが祖父母のルーツを知ったり、人とのご縁を考えたりすることができる。葬儀は遺された方々がこれからの生き方に思いを馳せる機会にもなると思うんです」

 

 富田林に家族葬専門の葬儀会館の建設も進め、夏に完成予定だ。「装飾から香りに至るまで、いろいろな演出に対応できる会館を目指しています。目標は10年以内に会館を3つ建てること。ご遺族さまとは長くても3日ほどのお付き合いです。だからこそ凝縮して、全力で向き合っていきたいと思っています」

 

(ライター  松岡理絵)

 

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