株式会社 サン・リード 川面恒太さん no.241
18歳で就職した不動産会社
育ててくれた当時の社長に感謝
南海高野線「千代田駅」から徒歩約5分。河内長野市立千代田中学校そばに、全面ガラス扉の小さくておしゃれなオフィスがお目見えした。洗練されたサロンのような佇まいながら、ここはなんと不動産屋さん。この千代田で生まれ育った川面恒太さんが5年前に起業した「株式会社サン・リード」のオフィスなのだ。
「業務内容は、土地・建物の売買仲介や新築戸建て住宅の分譲・設計・施工などですが、今年からリフォームにも取り組み始めました。大規模リフォームから一部屋だけのリフォーム、水道のパッキンを替えてくれという小さなオーダーまで対応させていただいています。どんなご相談にもベストなサービスを提供できるよう、新しい工法などつねに勉強しています。自分も会社もこれからまだまだ成長していきたいですので」
まだ33歳ながら会社のリーダーとして若いスタッフたちを率いる川面さんは、しっかりとした口調で仕事について語ってくれた。
「最初は新築分譲住宅の売買専門だったんです。取り扱うのは、90%が河内長野市内の物件で、さらにその80%は千代田小学校区内という超地域密着型(笑)。取引量の半分ほどは紹介していただいたお客さまで、田畑の売買などは地主さんから連絡をいただいてから始まるのですが、この地域に暮らす知人や友人、これまでのお客さまとのつながりのつながり……でお声がけいただく仕事がとても多いですね」
同級生やその親族や友人など地域に根付いた交友関係をベースに、「土地の売買なら、川面さんに相談してみたら?」と輪が広がってきたという。そうして舞い込む依頼が増え続けて一人では対応しきれなくなったことから、2020年には初めてスタッフを雇用。今では4人の若手スタッフが在籍している。
川面さんは高校卒業後、18歳で富田林にある不動産会社に就職した。「当時、不動産業に特に興味があったわけではないんです。求人雑誌を見て、一番よいお給料だったという理由で……(笑)。でも15名もの応募があった中で、社長はどうしようもない若者だった僕を雇ってくださった。いい社長に拾っていただいたと今でも本当に感謝しています」
その社長が温かく励ましながら川面さんを育ててくれたように、川面さんも若いスタッフが仕事を通して大きく成長できるように応援していきたいと話す。「当時社長は37歳。僕もその年齢に近づいてきました。社長は少し荒れていた僕に、人生とはこういうものだ、まじめに働いて家族を守っていけと教えてくれました。そんなふうに育ててくれたから、今の僕がある。僕もここで働いてくれている若いスタッフたちに責任をもって接していかなくてはと感じています」
技術を持つ若手スタッフを雇用
ベストなサービスと価格を実現
就職して10年経ったら独立して自分の会社を立ち上げようと当初から決めていた。ところが就職して5年後に会社が倒産してしまう。両親を早くに亡くし、妹の進学のサポートもしていた川面さん。結婚も早く、当時すでに子どもも生まれていた。幸い、当時の先輩や同僚らと数人で新たに不動産会社を作ることとなり、仕事は再び安定した。「新しく作った会社は堺市が拠点でした。でも僕は地元の河内長野を拠点に仕事をしたいという思いが年々強くなってきていたんです。もともと、最初の就職から10年後には独立したいという目標を持っていたので、28歳の時に思い切って独立することにしました。その頃は資金も本当になかったので結構な借金をしましたね。でも、不安はあまりなくて、地元で地域のために仕事ができるというワクワク感のほうが遥かに大きかったんです」
同級生たちとのつながりだけでなく、子どもの学校のPTAや地域のだんじり祭りなどを通じて地域に知り合いがどんどん増え、地域の現状もより多く見聞きするようになった。「個人としてはもちろんですが、僕が10年間やってきた不動産業でももっと地元に貢献したいという気持ちが増してきたんです。でも一人でできる仕事にはかぎりがあるので、ここに事務所を構え、スタッフを増やすことにしました。去年は会社というものを考える大きな転換期でもありましたね」
新入スタッフたちはクロス貼りやコンクリート打ちの技術、エクステリアの知識を持つ職人たちでもある。内部に技術のある職人がいることで、より細やかかつ低価格でサービスを提供できる体制が生まれたという。「自社でできることが増えると、その分コストダウンもできます。お客さんが求めていることはそれぞれ異なるので、その声を丁寧にお聞きしながらベストな金額でご提案したいと思っています。外部の職人さんも、これまで一緒に仕事をしてきたのは地元の信頼のできる職人さんたちのみ。顔を知らない方に頼むことはありません。社員、お客さま、協力企業……、かかわる誰もが幸せになれるようなかたちで仕事をすることがモットーです」
相続やローンなど、土地に関わるさまざまな相談が日々持ち込まれる。「うちはハウスメーカーではないので、〝家を建てる〟ことが結論のすべてではないんです。すべて根本には〝住まい〟がありますが、その方の人生や生活がよくなる選択は何なのかを考えて提案するのが僕の役割かなと思っています。たとえば、相談によっては、それを一番良い方法で解決できるのは、不動産屋ではなくて司法書士さんだったりするので、その場合は信頼できる司法書士さんにつなぎます。また、その方にとってデメリットのほうが多い売買の場合はそれはやめておきましょうと提案します。ですので、10の相談のうち、9は仕事にいたりませんね(笑)。でも、取引を発生させることを目的にはしたくない。その方にとってベストな選択をしてもらうことに力を尽くしたいと思っています」
不動産業者、リフォーム業者というと、〝悪徳業者〟をイメージされてしまうこともある。「残念ながら実際にそういう業者がいて、手抜き工事や高額請求など腹立たしい話は身近でもよく聞きます。そんな時、地域の不動産業者としてそういう事態を防ぐことはできなかったのかと、悔しい気持ちになるんです。住まいというのは、重要な生活の場。気になること、相談したいことはどなたもたくさんあるはずで、おこがましい目標ではありますが、地域の人たちに気軽に『床の貼り替えってどうしたらいいん?』『ドアを付け替えたいんやけど』と聞いてもらえるような、不安なく相談できる存在になれたらと思っています」
(ライター 松岡理絵)
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