足管理療法士 西中千香子さん no.244
看護師歴40年のキャリアで
一人ひとりに応じたアドバイス
「足を触ると、身体の不調が手に取るようにわかります。その不調を改善するために、足から見直してほしいなと思うんです」
そう話すのは、今年の7月にオープンしたばかりの「足と靴の専門店 足からげんき」代表の西中千香子さん。羽曳野市古市の落ち着いた住宅街にサロンを構え、娘の優花さんと二人三脚で、一人ひとりの〝足〟の状態と向き合い、健康づくりをお手伝いしている。
「足の裏には、全身の器官や内臓につながる抹消神経が集中しています。それぞれに対応する部分を反射区といいますが、足裏にはそれが64もあるんです。足つぼマッサージなどで使われる足裏のイラストを見たことはありませんか? 例えば足の指は頭、土踏まずのあたりに胃や膵臓、かかとは座骨……。その他、すべての器官や内臓に対応する反射区が足の裏にあるので、まずそのすべてを触らせてもらうんです。そしたら、あ、胃が不調なのかな、腰が不調なのかなとわかるんですよ」
真新しい清潔感いっぱいのサロンの中には、リクライニングのゆったりしたシートが2台。ここで丁寧に一人ひとりの足裏をチェックするという西中さん。看護師歴40年というキャリアを持つだけに、豊富な知識とともに改善に向けたアドバイスをしてくれるのが頼もしい。そして、足の反射区のマッサージだけでなく、靴や歩き方についても指導をしてくれるのがこのサロンの特徴だ。
「反射区の刺激は、効果が続くのは7日間ほどなんです。ですから大事なのは普段の生活習慣の中で健康を目指すこと。ご自身の力で健康になっていただくことなんです。具体的には、体のバランスを取れる靴を履いていただいて崩れたアーチの復元を目指し、そして、正しい歩き方を身につけて必要な筋肉をつけていただくこと。そんな観点から、その人に必要なアドバイスをさせて頂いています」
普段、自分が履いている靴の裏を見てみてほしい。特定の部分だけが妙に擦り減っていないだろうか。また、自分の歩き方のクセにも気づいているだろうか。
「擦り減った靴をそのまま履いていると体の歪みにつながってしまうので、注意して見てもらえたら。でもそもそも、正しい歩き方を学ぶ機会がなかったという方がほとんどですよね。そしておそらく、多くの方が足の指を使って歩いていません。本当は、かかとから着地して、親指を押し出すようにして踏み出すという歩き方をしてほしいんです。足の親指の付け根は目の反射区。ですから、そこを刺激するように歩くことで、目の疲労も和らぐといわれます」。
かかとから着地し、足の親指から抜けていく——。それを意識して歩くと、確かに足の内側の筋肉を使っていることに気づかされる。「がに股、内股、モデル歩き……、それらは足の外側にばかり筋肉がついてしまいがち。でも骨格に歪みをきたさないためには、内側にも筋肉をつけないといけません。必要な部分に筋肉をつけるためには、正しいウォーキングが大切。歩き方の矯正は時間がかかるのですが、ウォーキングをマスターしてもらうことが足の健康、ひいては全身の健康には不可欠なんです」
生活習慣の改善が大切
死ぬまで健康に歩くためのお手伝い
足のアーチが崩れると、それがいずれは足首や膝、腰、肩、首の歪み、そして痛みにもつながっていく。だから「足から健康になっていこう」と西中さんは呼び掛けているのだ。足のアーチは、若い人でも崩れている場合がある。また、子どもであってもすでに歪んでいることがある。「でも子どもの場合は、くつ下をはいてもらうだけでもゆがみの矯正ができ、集中力が高まる効果も期待できます。一方、大人の方は、歩き方の癖を正すのには時間がかかることが多いですね。ずっと積み重なってきたものなので……」
前述のように、西中さんは看護師として40年のキャリアを持つが、仕事をする中で「患者さんのお世話はできるけれど健康にはしてあげられないこと」が気になっていたという。「また、一度服用し始めたら一生飲み続けなければいけない薬もあったり、西洋医学に疑問を感じるようになったんです。そして、重い疾患になる前に、もっと前段階から健康のお手伝いをできたら……と考えるようになりました。そんな時に出合ったのが、足から元気を目指そう、未病の段階からケアをしようというベネシュの考え方でした。これだ!と思って勉強し始めました」
足のことはもちろん、水分の採り方や免疫力を高めるための体温の上げ方、筋力をつける運動など、生活習慣に取り入れやすい健康法を学び、惜しみなくお客さんに伝えているという西中さん。「膝や股関節が悪くて歩くのがつらいという方や、靴が合わなくて足を痛めてしまったという方、生理痛がひどいという方……、サロンにはいろんな体調不良を抱えた方が来られます。足から見直していきましょうと一緒に改善に取り組むなかで、痛みがラクになったと言っていただけたときには本当にやりがいを感じます」
そして、「生活改善をしないと繰り返すことになるので、歩き方や食べるものに気をつけたり、受け身ではなく生活習慣の中で自分の努力でできることを増やしてほしい」と西中さんは一人ひとりに必ず伝えている。加えて、「こんな運動をしてくださいねと、お一人おひとりに合った宿題もお出ししているんです」とほほ笑む。
「平均寿命は延びましたが、大切なのは健康寿命。できるなら、死ぬまで健康で歩きたいじゃないですか。私はこれからの人生、そのためのお手伝いをしていきたいなと思っているんです」
(ライター 松岡理絵)
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